食眠地
玄関を出てみると、降りしきる雨は音も無く、冷気が有三を迎えた。
さっき4輪を走らせながら、有三は思った。
植民地とは、全世界を分割したが、日本という国はただ一国、
植民地化されなかったのではないか。
これは稀有の出来事というべきか。
韓国台湾も西洋に支配されずに在って、ところが、日本が先に植民地にしてしまったのだろうか。
アメリカ合衆国とロシアと西欧は、植民地争奪を繰り広げ、
第1次世界他薦、第2次世界他薦もその植民地戦争の発展であろうか。
日本は、列強と拮抗する中で、遂に敗北し、
東京大空襲ほかの本土被害を受け、沖縄上陸の侵攻と、広島長崎の原爆投下を受ける。
植民地化されなかったものの、
列強の圧倒的火器製造を導入する富国強兵は、
トルコ、アラビアのロレンス物語のゲリラ的戦術とは
ならず、中国統一戦線の抵抗戦術ともならず、
焦土竹槍玉砕は未然に終焉した。
戦後あちこちで殖民位置の自律が起こる。
日本は、一気に敗戦処理から再スタートして、経済成長の範を示したあるよ。
植民地にならなかった、これはすごいのかも。
しかし、1868〜1945の77年間の近代国家論は、
その後に引き継がれて、諸課題を残し、惹起した世相が今日のありようではないのだろうか。