心の仕組み

私が子供だった頃」というNHKTV企画である。

 父の無い子、養老猛解剖学者は、昆虫採集に熱中した。

一人で遊ぶものと思っていて、寂しいとは思わない。
 母の勧めで、昆虫学者に面会して、薫陶を受けた。同じ図鑑を持った。

 母は地域で医師をしていた。
 父は、結核で病死する。

 この父との別れが、心理的な過程を辿ることになる。
 臨終の床で、皆居並び、さよならと言いなさいと猛に母が言った。
 猛は、挨拶が出来ぬまま父を見つめた。
 父は、待っていたが微笑み、その直後喀血して絶命する。

 納骨でも悲しみが湧いてこなかった。

挨拶が出来ない人間になった。
 父と別れなかった。
 40歳のときに電車に乗っていると、すべてがわかった

 その時初めて、突然涙があふれた。